さはらやの倉庫 短歌と愚痴と雑記

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塔新人賞応募作 夕焼けと朝焼け  (予選通過)

塔新人賞に応募した連作です。
栗木さんに一票を頂けました。



夕焼けと朝焼け       佐原八重


赤と青のセロハン重ね見るように天井にへばりつく夕焼け

ラプソディインブルー使わない鉛筆たちが聞き惚れる旋律

学生の万年床に抱き枕私より優れている予感

一限を布団の中で青空が良心を叩く音を聞いている

遠距離で四年目の恋しばらくはダメな私を見せなくていい

五年目でコートのボタンは掛け違えられることなくもうすぐ取れる

そんなにも心配しないで携帯の予測変換には大丈夫

もくもくと煙の出ない煙突の下を歩いた黒スニーカー

出口まで緑色っぽい人がいてあの人はちゃんと逃げれただろうか

考える人のうなじにフリスビーを当てた私ではなく北風が

鼻水をすすると母に怒られた記憶を元にティッシュを探す

柔らかいティッシュの箱を持ち歩き気を使われることを知る鼻

母からの留守番電話(Googleのドライブはカーナビができるの?)

一年で伸びた前髪耳にかけ教え子に通分を教える

何回も通分をして教え子と私の公倍数を見つける

靴紐を結ぶとアニメの主題歌が自動で流れる金曜の朝

近眼でオリオン探す駐車場見えなかったと君に言うため

たましいは食堂前の日溜まりのベンチに時々置いてあります

五百キロ 二人にとって空港は少ししんどいどこでもドアだ

がらがらの到着ロビーは白っぽく君の鞄がいつもの青だ

いつ見てもかわいいねって母からのセーターを褒められて頷く

ガソリンをセルフで入れることに慣れこんなところだけ大人になった

事実のみ(それはあの日の夕焼けも試験結果も)私のものだ

型落ちのウォークマンから滑り出すピアノ、サックス、寝る前の夢

ブルーレイディスクを壊す母といてやたらと機械に詳しくなった

オタクには譲れぬものがあるけれど九割は譲り合いで生きている

マフラーとネックウォーマー並ばせて冬の公園の中の逢瀬

風邪でない喉の痛みと吐く息の湿度と君の腕の温もり

日常に戻って君もしばらくはこの寂しさを味わえばいい

私たちは繋がっている夕焼けと朝焼けみたいに想いの中で