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さはらやのブログ 詩と短歌 時々自分のこと

詩と短歌とその他もろもろのブログ twitter @0ya5udon

短歌 歌壇賞応募作 「二十歳」

二十歳

なぜ風は風と呼ばれるこんなにも春夏秋冬 違う顔して

銭湯に先輩と行く路地裏で猫の鳴きまね互いに競う

ぼんやりとかがやく月に問いかける私がぼんやり見えていますか

大学の講義は中央左寄りうたた寝しながら過ぎてゆく午後

手短に用件だけをと切り出して隣のポチから始まる話

友人の友人のまた友人の感動を焼きまわして泣いた

春風に芽吹いた花を八センチヒールで潰し微笑む女

一年を振り返りつつ成長はブラックコーヒー飲みだしたこと

手を繋ぎ歩く二人の真後ろで抜かすかどうか三分悩む

雨の中傘を投げだし狂いたい狂いたいけど狂わず歩く

実家暮らしですと答え楽だねと言われて噛んだ下の唇

じいちゃんの三回忌にはじいちゃんの好きな饅頭みんなで食べた

耳鳴りが止まない夜に抱き締める冷蔵庫から近いさざ波

止めどない涙に虹はかからないシャワーで洗い流して終わり

南風受けて初めて夏だねと言葉がほろりと砂場に落ちた

初めてのパンプスは白詰め込んだ薬指から小さな悲鳴

台風の風にワクワクしなくなり知らないうちに大人になった

蝉たちが止めた陽炎たどったらあの日の夏に会える気がする

長すぎる夏休みには濃く強い風に運ばれた金木犀

新しいスカートを履き秋風に身体を全てを拐われたいよ

玉ねぎが流す涙を合わせたらスープ一杯ほどになるよう

季節からおいていかれた扇風機ほこりをすくって悲しみを待つ

絨毯の毛に逆らった手が残す跡が白くてとても寂しい

詰め込んだ一泊分の荷物には土産の場所が見つからぬまま

なめ茸の味噌汁が好きこの事は誰にも知られず生きていきたい

苦しみは私のものだ世界には孤独があると教えてくれる

北風に拐われぬようマフラーをきつめに結ぶ師走の始め

二十歳から二十一へと変わる日は何も変わらず曇った土曜

焼き芋が遠くの方で鳴っていて悲しみ混じりに私も歌う

一年が終わる騒ぎが始まって今年も除夜の鐘は聞こえず