二十一歳
制服も恋って何と問う友も「昔」になりゆく二十一歳
青空を真っ直ぐ見れる幸せがあることを知る病床の窓
飲み会の誘いが素直に嬉しくて同期のメンツを浮かべて笑う
先輩の明るい気遣いここだけが日溜まりのような気持ちになって
心配をかけまいとした家族には心配かけろと怒られた春
つらくても幸せですと言うように父の右手を優しく握る
真夜中に車で二百キロ走り私のために来てくれた母
一歳の誕生日から母代わり必死に私を育てた祖父母
心配をかけた友とはそれ以上楽しいことを積み重ねたい
恋人のメールで始まる毎日に何度心を救われただろう
「大丈夫」「頑張ってるよ」「愛してる」あなたの言葉は私の薬
思っても届かぬような距離にいるだけど届いていると信じる
ありがとう何度言っても足りなくて最愛の人は小さく笑う
まだ熊と羊を抱いて寝ていますたぶん死ぬまで抱いてるでしょう
醜くて弱い自分を吐き出せば三十一文字に命が宿る
人間は本質的に孤独だと知ってそれでも繋がる勇気
死にたいと言うたび小さな生きたいがつもり積もって明日ができる
泥まみれ這いつくばって生きていてそれでもいつかきっと笑える
死にたいと言ってもいいよつらいときつらいと言って、それが「生きてる」
ありがとう私にくれた気遣いの全てに愛と感謝よ届け
セーターの袖口ほどけ夢の中あなたへ続く道となりゆく
学校をサボってむかう湖の静かな水面に感じる威厳
寂しいと思わなかったあぜ道を一人で歩く靴裏に泥
大学の裏山の名を知らぬまま三年過ぎて愛着がわく
大人だと自覚せぬまま過ぎ去った二十歳を少し遠くから見る
絨毯の上で過ごした半年をパンの匂いで思い出してる
二十一年前の日は大雪で母ははしゃいで私が泣いた