さはらやのブログ 詩と短歌 時々自分のこと

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私とピアノ

私とピアノ



午後八時を過ぎてガラス戸を開けると聞こえてくる、ピアノの音。
エリーゼのために、月光、let it go……
時々、音が外れてこれはレコードではないのだと分かる。
弾き終わった後に、「ママ、弾けたよ!」という幼児の声
ああ、これはこの子が弾いていたのですね
「よかったねー」
という母親らしき声も聞こえる
この子は楽しんでピアノが弾けてるのだなと感心する。
私は、ダメだった。
ピアノを心底楽しんで弾けたことなど一度もなかった。
五歳からピアノを始めて十年間ピアノ教室に通ったがピアノは固い鍵盤を私にさらすだけ、私はピアノに心をついぞ開けなかった。
ピアノのレッスンの前は、三十分、この三十分だけ我慢すればと唱えて行った。
友達とかが楽しそうにピアノを弾いているのを不思議そうに見つめる子供だった。
その後、本当に心から好きで取り組めるものに会って、あぁあの子達は本当に好きでピアノを弾いていたのだと理解した。理解したが、それとピアノが楽しくなるのとは別物だった。

外のピアノはまだ続いてる。

バイエルから始まり、色々な曲を練習したが私の心に残っているのはほとんどない。
ピアノが残したものはピアノを、やめてからピアノを聞くと小さく小さく痛むこの胸の傷だけだ。

ご飯ですよーと夕食に呼ばれる
きっとこの母の声もご近所さんに聞かれているのだろうと思いながらも
はーいと大きく返事をする。
できるだけ明るい声で。