読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

さはらやのブログ 詩と短歌 時々自分のこと

詩と短歌とその他もろもろのブログ twitter @0ya5udon

連作 押し入れの冒険

押し入れの冒険

押し入れはいつでも真っ暗その先は熊野古道に繋がっている

ウォークインクローゼットは薄暗くシュバルツバルトに繋がっている

押し入れで昼寝してたら二軒先咲子ちゃんに揺り起こされた

緑さえ恐れるような真緑につつまれて五百年前の熊野

咲子ちゃんトイレへ行きたいそうなので僕はお花を摘みに行きます

ざわざわと木々が揺れると森が揺れ一緒に空と僕らも揺れる

踏みしめた落ち葉は少し濡れていていつか地下水となって出会う

動物の図鑑を持って咲子ちゃん押し入れの中で何をしてたの?

「真っ暗な押し入れの中でライオンの写真をニヤニヤしながら見てた」

動物の図鑑はここにおいといて僕らは進む お菓子の家へ?

小さめの鳥居があってそこからはきっと小さな神様の家

知らぬ真に石が敷き詰められていて裸足の僕らはたぶん不審者

遠くから鳥の鳴く声こわくない咲子ちゃんの手震えているけど

真っ白な格好をした人たちが現れて僕ら茂みに隠れる

いつもならゲジゲジいたら大声をあげるけど今は叫ばなかった

人々がいなくなったらまた二人ぼっちで世界は僕らに優しい

さらさらと水が流れる透明が実物になったような湧き水

口元が痛くなるほど冷たくて甘めの水が喉を潤す

もう着てたパジャマは葉っぱだらけだと咲子ちゃんは笑って泣いた

西日から時間と方角割り出して僕らは今だけロビンソンだね

眩しくて目が開けられない太陽は自然の中でこんなに大きい

日がくれてお化けが出そうになってきてこれぞつり橋効果だと思う

下駄箱で明日咲子に会ったなら薄く笑ってあいさつしよう

二人して木のうろの中に入ってる狼だけは出ませんように

咲子ちゃん僕の隣で眠いって寝るなよ僕も眠いんだから

上まぶたとても重くてもう僕は寝るよ押し入れの神よバイバイ

気付いたらしらないとこで丸まってきっとここは咲子の押し入れ

咲子ちゃん僕の押し入れから出たら二人で一緒にこっそり笑おう

足裏にびっしり落ち葉と苔と石押し入れの神はいたずらが好き

もう二度と行けない冒険押し入れは熊野古道に繋がっている