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さはらやのブログ 詩と短歌 時々自分のこと

詩と短歌とその他もろもろのブログ twitter @0ya5udon

詩 図書館が好き

図書館が好き

図書館が好き
このまちの図書館が好き

ここでは誰もが呼吸する
大人も
子供も
絵本も
辞書も

息がつまった堅苦しさはなく
子供は遊び走り回り
学生は勉学をし
大人はそれを見守りながら本を選んでる

背の高さまである本棚もない
あたりを見渡せる小さめの本棚がいくつもならび
あけっぴろげに空が広がる

あちこちにおかれた椅子に
みんな思い思いに座って本を読んでる

赤ん坊がなく声がして
学生の笑い声もする

ここは私の知っていた図書館と違うが
私の一番のお気に入りとなりそうだ

図書館が好き
このまちの図書館が好き

詩 伝えたいことなど

伝えたいことなど

伝えたいことなど
ないから空を見ている
目を合わせずに
君のとなりにいれることを
誇りに思う

伝えたいことなど
ないから鳥を目で追う
会話もせずに
君のとなりにいれることを
光栄に思うよ

伝えたいことなど
ないから星を探す
手も繋がずに
君のとなりにいれることを
幸せだと思うよ

伝えたいことなど
心の海に
捨ててしまった僕の
隣に君がいることを
誰にも伝えないでおく

君は僕がなんと言っても
笑ってるだけだろうから
それでいいんだ

もし僕が死んでも
なにも伝えないで
泣きもしないで
笑いもしないで
空を見ていてほしい

短歌 連作ではないもの

期待から諦めになる瞬間のため息の色みたいな机

手のひらで踊るあなたをいつまでも見ていたいけど食事の時間

悲しみを悲しみであると認めたら存外素直になついてくれた

手を繋ぐ先にあるものだけを見て愛だというなら 手を離そうか

つまらない話をしてる気がしても猫が膝からまだ動かない

話したくないときがあり夕暮れはそのときのためとっておくのだ

金持ちになってもしょせん金持ちでしあわせ持ちにはかないまへんわ

大切なことを忘れてさまよった人が列車にひかれて死んだ

しょんべんをひっかけたから怒られたみたいな街を探してあるく

片付けた紙ナプキンに書かれてた最後の言葉 うんこ漏らした

手をとって踊るあなたのつま先を踏んで家庭に戻すのも妻

 

短歌 恨み疲れて

恨み疲れて

泣きつかれ眠った君にキスをする。俺はいまでも君の友達。

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あの人を恨み疲れて蛇口から落ちる水まであの人の声

スカートがほつれてふいにこみあげた嗚咽が染たブラウスのすそ

殺せ殺せあの人の不幸を願う全ての私を殺してしまえ

まだ笑顔いつから真顔あの人の前で私は優しく腐る

冬に咲く花を憎んだ困難に負けないなんてあの人みたいで

泣いて泣いて涙の意味も透明になってそれでもあの人が憎い

手の先がしびれるほどの憎しみと愛が重なり、無言の二人

あの人を面と向かってにらめないから横顔を(殺してやるわ)

さよならは業務連絡みたくするそれが私の最高の意地

元カレの愚痴を笑って聞き流す君には言えぬ大好きがある

(友達の中で一番恋人に近い男の腕で眠った)

短歌 歌壇賞応募作 「二十歳」

二十歳

なぜ風は風と呼ばれるこんなにも春夏秋冬 違う顔して

銭湯に先輩と行く路地裏で猫の鳴きまね互いに競う

ぼんやりとかがやく月に問いかける私がぼんやり見えていますか

大学の講義は中央左寄りうたた寝しながら過ぎてゆく午後

手短に用件だけをと切り出して隣のポチから始まる話

友人の友人のまた友人の感動を焼きまわして泣いた

春風に芽吹いた花を八センチヒールで潰し微笑む女

一年を振り返りつつ成長はブラックコーヒー飲みだしたこと

手を繋ぎ歩く二人の真後ろで抜かすかどうか三分悩む

雨の中傘を投げだし狂いたい狂いたいけど狂わず歩く

実家暮らしですと答え楽だねと言われて噛んだ下の唇

じいちゃんの三回忌にはじいちゃんの好きな饅頭みんなで食べた

耳鳴りが止まない夜に抱き締める冷蔵庫から近いさざ波

止めどない涙に虹はかからないシャワーで洗い流して終わり

南風受けて初めて夏だねと言葉がほろりと砂場に落ちた

初めてのパンプスは白詰め込んだ薬指から小さな悲鳴

台風の風にワクワクしなくなり知らないうちに大人になった

蝉たちが止めた陽炎たどったらあの日の夏に会える気がする

長すぎる夏休みには濃く強い風に運ばれた金木犀

新しいスカートを履き秋風に身体を全てを拐われたいよ

玉ねぎが流す涙を合わせたらスープ一杯ほどになるよう

季節からおいていかれた扇風機ほこりをすくって悲しみを待つ

絨毯の毛に逆らった手が残す跡が白くてとても寂しい

詰め込んだ一泊分の荷物には土産の場所が見つからぬまま

なめ茸の味噌汁が好きこの事は誰にも知られず生きていきたい

苦しみは私のものだ世界には孤独があると教えてくれる

北風に拐われぬようマフラーをきつめに結ぶ師走の始め

二十歳から二十一へと変わる日は何も変わらず曇った土曜

焼き芋が遠くの方で鳴っていて悲しみ混じりに私も歌う

一年が終わる騒ぎが始まって今年も除夜の鐘は聞こえず

短歌 「一人旅ブギ」(みんな読んでー!)

一人旅ブギ

出発の朝は眩しい朝焼けの中に一羽のニワトリが飛ぶ

ホームへと滑り込んだら僕よりも輝いているキハ75

まだ低い陽を体内へ取り込んで僕はもうすぐ旅人になる

乗り込んだ車両は閉じた異世界の日溜まりだった(猫と目が合う)

サンフランシスコについて考えて同時に猫を撫でるテンション

ゆっくりと列車が駅を出るたびに取り残される錯覚をする

真っ直ぐな線路もいつか曲がること僕も大人になるということ

山裾のカーブは続き独特の車両の揺れに熟れていく僕

鉄橋は爆破地点になりやすく少しワクワクしながら渡る

川沿いに列車が走り丁寧な画家が魚を描き始める

終点を乗り継いだとき僕の背に秋のおわりが張り付いていた

北へ行く列車にのってどこまでも僕の世界を抜け出したくて

日が暮れて窓にうつった僕の顔ひどい顔だと言う人もなく

終電の先のベンチでとりあえずパントマイムの練習をする

明け方にニワトリが鳴く僕も泣く逃げた世界を哀れんでなく

つまずいて倒れた先にあるものは誰の手でなく古い空き缶

真っ直ぐに自宅へ帰る道筋を避けて一番星を見つける

一心に空を忘れなかったならあのニワトリはまた空を飛ぶ

短歌 「正常」

正常

狂ってる、さかなもとりもあおぞらもこいしもきみも尊くはない

紙コップふにゃふにゃになり捨てられたそれがほんとの命の姿

山びこを叫んでみたらうるさいと怒られた日に叫んだ「ファック!」

血を抜いたあとの小さな傷口を痛い痛いとわめく人たち

すれ違いざまに目と目が合うことを恋というならヤンキーが愛

助けてと言えない人は助けない(何が正義を作るのだろう)

正しさの羅針盤には北がなくみんな手のなる方へと歩く

爪という爪の汚れを集めたら少しはいい子になれるだろうか

青空を曇り空だと間違えるように私は女になった

死にたいと思ったときが死ぬときでないことだけがきれいに確か

分からないことが多くて血液が緑になった気がしただけだ

片方のひじ掛けがない腰掛けも私は腰掛け、と呼んでしまった

太陽を赤いと言った瞬間に赤ん坊ではいられなくなる

恥じらいを失ったとき少女らは海に向かってもう叫べない

席取りのためのどうでもいい本を本と呼んでもいいのだろうか

君のことトイレでないと知りながらトイレと言って席を離れる

再生数百万回の音楽に慰められて耳が冷たい