さはらやの倉庫 短歌と愚痴と雑記

短歌と愚痴と雑記 twitter @0ya5udon

2018 短歌研究新人賞応募作

死にたい理由がない   佐原八重



包丁の場所を思って寝るときの凪いだ心も体温を持つ


双極性障害二型っぽいんやてぇ」そうね方言だと分かってる


自殺って悪いことです知ってます朝は四時間後にやって来ます


理由なくただ死にたくて曖昧に落ちれる崖を思い描いた


永久機関たこ焼き製造機の前が絶望的なほどに明るい


ひどい人だから九月の晴天に泣き真似をして眠ってしまう


カーテンの隙間を動く太陽に見つけないでと言う 苦しくて


死ぬ理由を医者に聞かれて「ないです」と答えればサギが飛んだ瞬間


新しいドラッグストアの看板は明るくて正しいことみたい


おもしろい事を探して仏壇の中を覗いてしまう月曜


永遠を探して開ける冷蔵庫の棚にいっとう白い骨壺


リコーダーの音を上手に思い出せなくて布団を被る水曜


街灯の下の小石に気づいても何もできない、できやしないよ


死にたくてでも死ねなくて交差点青信号で渡る金曜


閉じられた世界の中で息をするのがうまくなる つらくはないよ


あらかたの荷物を見捨て旅に出る夢だとしたらこれは日曜


つらいって言葉にすればあふれでる涙、これは甘えですか


濡れたまま髪を毛布に押し付けて砂漠みたいな感情迷路


どうでもいいお皿を割った時のようにステップを踏む踏切の中


鳩尾に火を持っている あたたかい 生きているとはどういうことだ


朝焼けが見たくて夢を飛び出した夢を見ている とても幸せ


脱ぎ捨てたパジャマが床に散らばっていつか私もこうなるだろう


舞い上がるビニール袋 死はいつも心臓の裏側に張り付く 


うっすらと希死念慮を負いながらくずまんじゅうを食べる罪悪


テレビの中の死は誘惑の香りしてなんで殺してくれなかったの


そんなことで悩んでいるのかと言ってくれ私は泣くししゃっくりもする


「ほんとうに自殺するかは分からない。その時までは」「何だってそう」


生きないと死ぬなんてこと信じられる?こんなに死にたいのに信じられる?

「救いなんてないよ」救いがあるとすればそういう形だと美しい


死にたいに代わる言葉を教えてよ 叫んでも叫んでも生きてたい

八月六日 平和を願って

八月六日 平和を願って

ながさきに行くのは悲しいからやめろと祖父は言う悲しいからやめろと

広島へたった一回行ったことを祖母は遠い遠い目をして語る

空襲の翌日ずっと空は灰で満たされてどのまちもどのまちも

米軍の飛行機を探照灯が追う夜を聞く静かな夕食

焼夷弾の降り注ぐ畦道を逃げた祖父の年齢で迎える八月

戦争の話はイヤと言う祖母がぽつりとこぼすサイレンは、イヤ

戦争を生き延びた人の孫となり孫となり聞くあなたから聞く

たくさんの人が死んだと八月の青空よ喉の奥が痛いよ

死にたいと思っていても核爆弾は無くなれと思っています切実に

今はいまを生きよう祖母に熱中症を注意しながら見る平和宣言

詩 千羽鶴

千羽鶴

千羽鶴の群が
一本の糸によって一つの方向を見るとき
その先に平和があるのだろうか

昨日の生きたいと
今日の死にたいは

どちらも本物で
どちらも偽物だ

全てはひとつにならない

糸の切れた千羽鶴
てんでばらばらの空(くう)を向き

まるで
平和があるかのようだ

無題

死にたいんです
死にたいんです
いつか死んでしまうのに
死にたいんです
いつ死を見たと言うのでしょうか
死にたいんです
ついに死を見ず死んだあまたの魂よ
死にたいんです
死にたいんです

真昼間の図書館の薄いホコリになりたいんです
ラブホのシーツの端の赤茶色の染みになりたいんです
もう出なくなったボールペンの先の最後の筆圧になりたいんです
死にたいんです
死にたいんです
これを死にたいと言わずになんと言いましょうか

夜道の自動販売機の横のゴミ箱になりたいんです
芝生の公園を駆け抜ける誰も知らない風になりたいんです
日向の猫の背にもぐる一匹のノミになりたいんです
なりたいんです
なりたいんです

全ての完璧なものや
全ての不完全なもの
全ての他者に
なりたいんです

これを死にたいと言わずになんと言いましょうか
誰も死を知らないはずなのに
皆、死を知っていると言います

死にたいんです
そして、生きたいんです

雑記(自分を責める自分について)

向坂くじらさんのしょぼい喫茶店にとても行きたい。
東京は遠いので行けないけれど。

けれど不思議だ。小中高で月曜日に本当に行きたくないと思ったのは数えるくらいしかない。
というか、かなりあったかもしれないけれど、忘れる程度のことだ。
学校はある意味サバイバルだったが、私はそれに勝ち残れたと思っていた。
学校は楽しい思い出の方がずっと多い。
なのに、しょぼい喫茶店に行きたい。
私なんか行っては行けないという気さえするのに。

あぁでも、大学を二留して、今も休学中の私はすさまじい不登校中とも呼べるのか。

あぁ、この文章を読み返して私は不登校をダメなことだと思っているとバレた。
文章を書くって、自分の中の偏見をあぶり出している行為みたいだ。
この文章もたぶん偏見に満ちている。

家族は好きだ。
友達も好きだ。
部活の仲間も好きだ。
恋人は大好きだ。

とても恵まれた環境に育って
なのになぜ、ちゃんと育てなかったのかと自分を責めるときがある。

あぁ、これじゃあ誰かをどうしても好きになれない人を責めているみたいじゃないか。
違うんだ。
たまたま私のまわりにはいい人が多かったという偶然を言っているんだ。

自分を責めるのはずっとじゃない
たまにだ。

それは生産的な考えじゃないし
それはネガティブなバイアスがかかり過ぎてるし
それを考える時間はほんの少しで、自分のこと好きだなと感じる時間だって持っている。

けれど、やはり
私は生まれなければ良かったと思ってしまう
こう考えることさえ罪だと思っている

私が悪くなった原因が私そのもの以外に見つからない
悪くなったというのは、突然つらくなるということ

誰のせいにもできない

つらい

誰かのせいにしたいというわけではないが
心の奥ではそう思っているのかもしれない

突然気分が落ち込む
軽い気持ちで死にたくなる

虐待や貧困の話を聞くと
私が虐待を受けずに、貧困も知らずに生きてきてごめんなさいと思う
そう思うことさえダメだと思うけれど、思ってしまう
私は恵まれているのに、ちゃんと育ててもらったのに
ちゃんと育てなかった

ちゃんと育てないと悪いのか?
違う
誰も悪いとか正しいとか良いとか言えない
そんな確かなこと私には分からない
ただ、ちゃんと育てなかった自分を悪いことだと責める自分がいるということだ

ごめんなさい
ごめんなさい

こんなこと四六時中思っているわけじゃな
けれど、たまにすぐに取り出せる場所にこのわたしは住んでいる

わたしにはわたしがたくさんいて
ソーダ水の中の泡のように生まれたり消えたりしているのだけれど
なんでそういうとあるわたしが生まれたり消えたりするのかさっぱり分からない

ソーダ水の中の泡の生まれるタイミングも消えるタイミングも、見ているわたしには分からないように

けれど、ソーダ水の泡はたぶん物理法則に従っているはずで
わたしもわたしが従うなんらかの法則を見つけようと必死になったり、諦めたりする。

つらい
嬉しい
空は
美しく
絶望の色だ

塔新人賞応募作 夕焼けと朝焼け  (予選通過)

塔新人賞に応募した連作です。
栗木さんに一票を頂けました。



夕焼けと朝焼け       佐原八重


赤と青のセロハン重ね見るように天井にへばりつく夕焼け

ラプソディインブルー使わない鉛筆たちが聞き惚れる旋律

学生の万年床に抱き枕私より優れている予感

一限を布団の中で青空が良心を叩く音を聞いている

遠距離で四年目の恋しばらくはダメな私を見せなくていい

五年目でコートのボタンは掛け違えられることなくもうすぐ取れる

そんなにも心配しないで携帯の予測変換には大丈夫

もくもくと煙の出ない煙突の下を歩いた黒スニーカー

出口まで緑色っぽい人がいてあの人はちゃんと逃げれただろうか

考える人のうなじにフリスビーを当てた私ではなく北風が

鼻水をすすると母に怒られた記憶を元にティッシュを探す

柔らかいティッシュの箱を持ち歩き気を使われることを知る鼻

母からの留守番電話(Googleのドライブはカーナビができるの?)

一年で伸びた前髪耳にかけ教え子に通分を教える

何回も通分をして教え子と私の公倍数を見つける

靴紐を結ぶとアニメの主題歌が自動で流れる金曜の朝

近眼でオリオン探す駐車場見えなかったと君に言うため

たましいは食堂前の日溜まりのベンチに時々置いてあります

五百キロ 二人にとって空港は少ししんどいどこでもドアだ

がらがらの到着ロビーは白っぽく君の鞄がいつもの青だ

いつ見てもかわいいねって母からのセーターを褒められて頷く

ガソリンをセルフで入れることに慣れこんなところだけ大人になった

事実のみ(それはあの日の夕焼けも試験結果も)私のものだ

型落ちのウォークマンから滑り出すピアノ、サックス、寝る前の夢

ブルーレイディスクを壊す母といてやたらと機械に詳しくなった

オタクには譲れぬものがあるけれど九割は譲り合いで生きている

マフラーとネックウォーマー並ばせて冬の公園の中の逢瀬

風邪でない喉の痛みと吐く息の湿度と君の腕の温もり

日常に戻って君もしばらくはこの寂しさを味わえばいい

私たちは繋がっている夕焼けと朝焼けみたいに想いの中で

辞書

自分だけが分かる、自分のための辞書


※書いた言葉は必ず国語辞典で確認する。(みんな語としての意味を知る)

仕事
自分で決めるもの


生きている人は誰も経験をしたことがなく、生きている人の誰もが経験をするもの
憧れるもの
甘美な響きを持つ

図書館
本が無料で読めたり借りれたりする場所
椅子や机が多くある
図書館に癒しを求めるものもいる


遠そうで最も近い人

祖母
最も近くにいたい人


世界であると思った人
人間の男である

祖父
もう永遠に会えない人
もう一度会いたい人
権威の象徴

サンダル
夏に履く履き物
帰ってくると足の裏を拭かなければならない
かわいい

ジーパン
便利なズボン
とりあえず履いておけば様になる

腕時計
腕に巻く時計
時間を確認するもの
着けていると自分が社会に馴染めるのではと思えるもの

市役所
大きな建物

クレーン
工事中の空にあるもの

ホームセンター
近くに新しくできると行きたくなる場所
動物が売られている


言語が書かれた紙の束
時々、生物のような振る舞いをする
言語は様々なことにつて書かれている
→文学
→書く(動詞)

文学
人が言語を使い行う活動
→言語

書く(動詞)
人が言語を何かの媒体に印すこと
媒体は紙、土、木、液晶画面など
→描く

言語
言葉。
人が意思疏通などに用いる音声とその音声を記号で記したもの
よく分からない
規則性があることが多い